大学2年生。趣味はスポーツ観戦とHIP HOPを聴くこと。最近は大谷翔平と佐藤輝明に興奮している。
「欧州スーパーリーグ」についてご存じだろうか? 毎年欧州で開催されているUEFA(欧州サッカー連盟)チャンピオンズリーグにとって代わることを目的として、2021年4月に設立されたサッカー大会である。2021年4月に12のクラブによって発足し、イギリスからChelsea、Arsenal、Tottenham、Manchester City、Manchester United、Liverpool、イタリアからJuventus、AC Milan、Inter、スペインからはBarcelona、Real Madrid、Atlético de Madridの12チームが参加し、最終的には合計20のクラブで争われる予定だった。しかし、わずか3日で計画は頓挫することになる。
その理由は英仏の各政府、各国の協会からの圧力により、当初参加予定であった12クラブのうち、9クラブが脱退する事態となったからだ。また、サポーター、選手からの批判が相次ぎ、Manchester UnitedとLiverpoolの試合前にはManchester Unitedのオーナーであるグレイザ一家に対する抗議デモにより、通常リーグの試合が延期する事態となった★1。ここまで聞くと、スーパーリーグはどんなに粗悪なフォーマットであったのだろうかと想像するに違いない。
欧州スーパーリーグが発足に至ったのには2つの訳がある。1つ目は、UEFAがこれまで以上の財政支出を拒み、各クラブの成長を妨げていたことである。2つ目は、24-25シーズンより、チャンピオンズリーグ(以下、CL)の参加チームが増加し、さまざまな国へ移動する回数が増えることで選手の負担が増すことが予想されていたからである。
ひとりのサッカーファンとして考えると、新フォーマットのCL、スーパーリーグ、どちらにも問題があるように感じられる。前者の問題は、試合数の増加であろう。欧州5大リーグはシーズンに38試合をする(ブンデスリーガのみ34試合)。それに加え、CL、ヨーロッパリーグ(EL)参加する選手はさらに試合をすることになる。また、親善試合や国際試合(EURO、コパアメリカなど)も定期的に開催されるため、選手はシーズンオフの期間が少ない。そのため、長期離脱する選手が多発し、短命で終わる選手が増えることが予想される。
後者の問題点は2つある。1つ目は、ある程度参加チームが固定される点であろう。現行のレギュレーションであるCLは、毎年別々のチームと対戦することによるワクワク感と、下馬評を覆し強豪クラブを打ち倒す中堅クラブの快進撃に寄せられる期待に支えられているように思う。だが、スーパーリーグは参加20チームのうち15チームが固定されている。現行のCLも毎年参加する面々がある程度同じとはいえ、それと比べて流動性は下がり、下克上を見かける機会は減少するように思う。
2つ目は、大会の格、ブランドが失われる危険性があるということだ。CLは1955年に創始され、決勝の視聴者数は毎年1億人を超えるという。スーパーリーグに参加するチームはほとんどが人気クラブなので視聴者数がガタ落ちすることはないだろう。だが、選手のモチベーションはどうだろう。自分の憧れだったヒーローが立っていた歴史ある舞台の決勝でトロフィーを掲げることが夢である選手は多いはず。スーパーリーグはそんな夢と今まで積み上げてきた歴史を破壊する恐れがあるのだ。
Manchester Cityに所属するIlkay Guendogan(イルカイ・ギュンドアン)はこうツイートした★2。
「With all the SuperLeague stuff going on... can we please also speak about the new ChampionsLeague format? More and more and more games, is no one thinking about usplayers? The new UCL format is just the lesser of the two evils in comparison to the Super League...」
「スーパーリーグの話題で盛り上がっていますが、チャンピオンズリーグの新方式についても話題にしてくれないか? どんどん試合数が増えていくのに、どうして誰も私たち選手のことを考えてくれないんだ? UEFA Champions Leagueの新フォーマットは、スーパーリーグと比べてもほんの少ししか劣っているとしか言いようがありません(どっこいどっこいである)……。」
「The UCL format right now works great and that is why it's the most popular club competition in the world - for us players and for the fans.」
「今のUCLのフォーマットはとてもよく機能している。だからこそ、私たち選手にとっても、ファンにとっても、世界で最も人気のあるクラブ大会となっているんじゃないか。」
ギュンドアン選手の意見は、彼個人の意見だけに止まるものではないと感じる。今回の件はUEFAもスーパーリーグ運営もどちらも悪いように思う。前者は選手の負担やクラブの財政難を考慮していない。後者は歴史やファンの気持ちを考慮することなくお金儲けに走った点である。スーパーリーグの目的や意図は理解できる。だが、ファンにメリットを説明し、時間を与えるべきだった。誰しもが一部の人気クラブに人気選手が移籍し、寡占状態になる構図を求めているわけではない。けっして人気ではないクラブが強豪クラブと試合することでスポットライトを浴びる機会も必要であるように思う。
そしてなにより、プレーするのは選手である。選手が気持ちよくプレーできる環境を整えるのが協会、クラブ、サポーターの役目であり、差別発言などはもってのほかだ★3。もう一度誰が主役なのか、私たちは何ができるのかを考えていく必要があると感じた今回の一件だったように思う。
大学2年生。趣味はスポーツ観戦とHIP HOPを聴くこと。最近は大谷翔平と佐藤輝明に興奮している。