恋愛は贅沢だ
現代の日本では、恋愛のハードルが一昔前に比べ、上昇しているように感じる。若者の間にはクリスマス、バレンタインなど、特に冬は恋人と時間を共有することがステータスであるかのような風潮がある。
#恋愛 #マッチングアプリ
identity
2022/01/23
執筆者 |
io
(いお)

大学2年生。趣味はスポーツ観戦とHIP HOPを聴くこと。最近は大谷翔平と佐藤輝明に興奮している。

恋愛する人/しない人の格差

 

現代の日本では、恋愛のハードルが一昔前に比べ、上昇しているように感じる。若者の間にはクリスマス、バレンタインなど、特に冬は恋人と時間を共有することがステータスであるかのような風潮がある。例えばクリスマスだが、異性と過ごせない者は、同性と過ごし、“クリぼっち”を回避する。イベント事を誰かと過ごし、SNSでその光景を投稿することで、そのイベントを楽しむだけでなく、他者からマウンティングの対象にされることを回避しているきらいもある。どうやら若者間では彼氏・彼女がいることは、一つの強者のステータスとなっている。恋愛とは、生物としては配偶者の争奪戦ではあるが、近年頓にその競争的な側面が強調され、恋愛しない弱者と恋愛する強者がどんどん二極化しているようにも見える。

 

競争的な性格が強まっていることには、マッチングアプリやSNSの登場により、自分の価値が目に見える形で数値化されてしまい、数字がそのまま自分の市場価値であると思い込みがちであることも関係しているだろう。数字が少ない人間は、カースト下位に追い込まれ、恋愛弱者であると自認してしまう。自分は好きな人に振り向いてもらえない、弱い人間であるといった思い込みは、人生に暗い影を落とす。マッチングアプリやSNSは、自己肯定感の低い人間を量産する。大袈裟な話ではなく、このように「恋愛弱者」自認者が増加すると、結果として、結婚する人間が減少するだろうし、ますます少子化が進んでしまうのではないかと懸念される。

 

本記事では、なぜ男女の恋愛が困難なものとなっているかをマッチングアプリの利用経験から考察していく。筆者がヘテロであるため、今回は男女交際に限った話となることをご了承いただきたい。

 

結婚も子育てももはや贅沢という認識

 

恋愛が困難になっている理由の一つ目として考えられるのは、結婚・子育て自体がコストがかかる、もはや贅沢だという認識の広がりである。子どもを育てていく上で、実際様々なお金がかかる。内閣府のデータを見てみよう。例えば教育費だが、年々上昇している。加えて大卒が年々増えている現状を見ると、今後も教育費が増大していくのは間違いない。また、現在の独身男性には低所得者が多いということも明らかになっている。子育てはおろか、結婚自体が贅沢品であり、自分には縁がないと考えている人が多いのかもしれない。その結果、結婚の前段階とも言える恋愛を、多くの若者が放棄する事態に繋がっているのではないだろうか。

 

自己肯定感がひたすら低い男性

 

二つ目の理由としては、男女共に自己肯定感の低下が生じていることが考えられる。共に自己肯定感が下がっているが、その理由は男女で異なっているというのが、筆者がマッチングアプリを使用するなかで気づいたことだ。一言で言ってしまうと、大半の男性はモテないから、女性の方はモテを勘違いしていることから、共に自己肯定感が低下しているように見える。

 

出会い系サイトオーネットによる調査結果を見ると、交際経験がない男性54.4%、女性58.3%であまり差がないように思うかもしれない。しかし、コンドーム・メーカー、サガミゴムの調査データを見ると、20代の男女で性行為の経験率に差があることがわかる。要するに性的な関係だけで言えば、男女間にも格差があり、男性の多くは性的な関係に乏しく、反対に女性の多くは性的な関係を持つこと自体は容易いという状況がある。

 

私見ではあるが、男性の間では、性行為経験の有無でマウンティングを行う文化が存在するように感じる。マウンティングによる優劣によって、女性にアプローチできる層とそうでない層で、格差が広がり、中間層が少なくなっているように感じる。その恋愛格差を表す指標として、マッチングアプリの平均いいね数を見てみよう。Pairs会員の数値を見ると、大半の男性が一桁いいね数に留まっていることがわかる。平均いいね数は、一部の人気会員の高い数字が影響しており、実情としては、人気男性会員が、女性に対するアプローチ機会を独占していることがわかる(霊長類で言えばゴリラの群れのような状況と言えるだろうか)。おそらくこのような状況で、大半の男性の自己肯定感が低くなる結果、未婚男性は、未婚女性に比べ、仕事、趣味、恋愛とあらゆる全体的な数値が著しく低い。日本のネットでは「チー牛」がミーム化し、現在も使用されている。非モテ・陰キャラ男性像の定着は、多くの男性がその自己像に安住していることの証明なのだろうか。

 

自己肯定感を履き違えた女性たち

 

一方、女性の平均いいね数⁸は、男性と比べ約五倍であることがわかる。このいいね数により、女性のユーザーの自己肯定感は上昇し、アプリ内でのパートナーの獲得につながると考えてよいだろう。しかし、ここにもネガティブな要因はありそうだ。マッチングアプリで、多くの「いいね数」を得られる女性の多くは、その数値をそのまま自分の価値だと勘違いしてしまっているのではないだろうか。これを表したネット用語が、「穴モテ」、「オタサーの姫」なのだと筆者は思う。しかし、そのように自己肯定感を履き違えた女性も、自分を過大評価した結果、「アルファオス(=群れでの一位のオス)」と一夜限りの関係を繰り返すことにより、自尊心が傷つく結果となる。

 

当たり前だけれど大切な、改善策の確認

 

以上の考察は、暗黙に性的な関係を持つことが目的とされるマッチング・アプリで起こっていることに基づくため、殊更に霊長類の配偶者争いと似た、生々しい競争的側面が強調されているように見えるかもしれない。しかし、現在の若者のマッチング・アプリの利用率を考えると、こうしたマッチング・アプリ内での経験は確実に若者自身の現実の経験だと言える。結婚や恋愛が贅沢になり、ひたすら自己肯定感を低め、恋愛しなくなっていく男性が増え、他方でマッチングアプリやSNSでちやほやされたことにより、自分の市場価値を見誤った女性たちが増加しているように感じる。インターネットの介在によって一層野蛮になっているようにさえ見える若者の恋愛事情にあって、自分を過大評価することなく、謙虚に生きることが、凡庸ではあるが何よりも求められているのではないだろうか。男女互いが恋愛に対し、健全なアプローチを行うことが出来る社会が到来することを願っている。

 

identity
2022/01/23
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(いお)

大学2年生。趣味はスポーツ観戦とHIP HOPを聴くこと。最近は大谷翔平と佐藤輝明に興奮している。

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